自己破産

法テラスで自己破産を依頼する場合の手続の流れ

法テラスとは

法テラスの正式な名称は、日本司法支援センターです。
総合法律支援法という法律に基づいて設立された公的な団体です。

法的なサービスを受けやすくするため、法テラスが依頼者に代わって弁護士費用を立て替える民事法律扶助という制度です。)などのサービスを提供しています。

法テラスを利用して自己破産を依頼する場合の費用の目安

原則

弁護士費用

法テラスを利用する場合、弁護士費用の金額は法テラスが決定します。

法テラスの場合、弁護士費用は、大きく分けて、着手金、代理援助実費、報酬金の三つがあります。

自己破産を依頼する場合、着手金と代理援助実費の二つがかかり、二つ合わせておおむね15〜20万円になることが多いです。
着手金と代理援助実費の金額は、債権者の数が多いと高くなる傾向にあります。

報酬金については、通常は発生しませんが、自己破産の申立ての準備の過程で過払金を回収した場合には、回収した過払金の金額に応じて報酬金が別途発生する場合があります。

予納金

自己破産の場合、申立てを依頼する弁護士に対して支払う費用のほかに、裁判所に納める費用(予納金)が必要になります。
予納金については、法テラスでは立て替えてもらえないため、自己破産を依頼される方に準備していただく必要があります。

破産管財人が選任される場合には、20万円以上の予納金が必要ですが、破産管財人が選任されずに破産手続が進む場合には、予納金として準備しなければならないのは、官報公告費の1万1859円のみです。

生活保護を受けている場合

生活保護を受けている場合、予納金についても法テラスが立て替えて支払ってくれるため、自己破産を依頼される方において準備する必要はありません。

また、自己破産の手続が全て終了した段階で生活保護を受けている場合には、法テラスに免除申請を行い、免除が認められれば、法テラスへの立替金の返済がなくなります。

法テラスを利用するための条件

法テラスの契約弁護士に依頼する

法テラスを利用するためには、法テラスと契約を締結している弁護士(契約弁護士)に事件を依頼する必要があります

法テラス札幌の契約弁護士は、法テラス札幌のウェブサイトの「契約弁護士名簿」というPDFファイルに掲載されています。

法テラスの契約弁護士への相談や依頼を希望される場合は、最寄りの法テラスに連絡して契約弁護士を紹介してもらうという方法と、自分で法テラスの契約弁護士を探して契約弁護士の事務所に直接問い合わせるという方法があります。

なお、筆者は、法テラス札幌の契約弁護士ですので、法テラスを利用して依頼していただくことが可能です。
事務所でご相談いただいた際に、法テラスの利用を希望する旨をお伝えいただければ、事務所で申込用紙をご記入いただき、法テラスの申込みの手続をしていただくことができます。

収入・資産が一定の基準を下回っていること

法テラスを利用するためには、収入及び資産が法テラスの定める基準を下回っていることが必要です(日本司法支援センター業務方法書9条1号)。
日本司法支援センター業務方法書は、法テラスのウェブサイトに掲載されています。

収入に関する基準

収入に関する基準は、日本司法支援センター業務方法書別表1で定められています。
日本司法支援センター業務方法書は、法テラスのウェブサイトに掲載されています。

世帯人数 基準金額
単身者 182,000円以下
2人家族 251,000円以下
3人家族 272,000円以下
4人家族 299,000円以下
5人家族以上 (299,000円+30,000円×(4人を超えた人数))以下

上記の基準を基本に、事情に応じて細かい金額の調整がされた後、基準を満たすかどうかが判断されます。

資産に関する基準

資産に関する基準は、民事法律扶助業務運営細則8条1項で定められています。
民事法律扶助業務運営細則は、法テラスのウェブサイトに掲載されています。

世帯人数 金額金額
単身者 180万円以下
2人家族 250万円以下
3人家族 270万円以下
4人家族以上 300万円以下

上記の基準を基本に、事情に応じて細かい金額の調整がされた後、基準を満たすかどうかが判断されます。

勝訴の見込みがないとはいえないこと

法テラスを利用するためには、勝訴の見込みがないとはいえないことが必要です(日本司法支援センター業務方法書9条2号)。
日本司法支援センター業務方法書は、法テラスのウェブサイトに掲載されています。

自己破産の場合には、免責を得ることができる見込みが必要です。

筆者は、これまで、「勝訴の見込みがないとは言えないこと」という要件を満たさないという理由で法テラスを利用できなかったことはありません。

民事法律扶助の趣旨に適すること

法テラスを利用するためには、民事法律扶助の趣旨に適することが必要です(日本司法支援センター業務方法書9条3号)。
日本司法支援センター業務方法書は、法テラスのウェブサイトに掲載されています。

自己破産を弁護士に依頼したいという場合、通常は、この要件を満たしていると考えられます。

筆者は、これまで、請求金額が低い金銭請求の事案で法テラスを申し込んだ際に「民事法律扶助の趣旨に適すること」という要件を満たさないと言われたことはありますが、自己破産の事案で「民事法律扶助の趣旨に適すること」という要件を満たさないという理由で法テラスを利用できなかったことはありません。

法テラスを利用して自己破産する場合の申込みの流れ

法テラスを利用して自己破産する場合の申込みの大まかな流れは、次のとおりです。

  1. 法テラス契約弁護士(依頼したい弁護士)に法律相談をする。
  2. 援助申込書等の書類、住民票等の申込みに必要な資料を、法テラス契約弁護士を通じて法テラスに提出する。
  3. 法テラスから、代理援助契約書等の書類が法テラス契約弁護士のもとに送付される。
  4. 代理援助契約書等の書類に署名押印し、法テラス契約弁護士を通じて法テラスに提出する。

法テラスを利用する場合の注意点

法人の場合には、法テラスを利用することができません
そのため、法人破産については、法テラスを利用してご依頼いただくことはできません(代表者個人の自己破産のみを法テラスを利用してご依頼いただくことは可能です。)。

ABOUT ME
弁護士 斎藤大貴
札幌弁護士会所属の弁護士です。債務整理と債権回収を中心に、さまざまなご依頼をお受けしています。