自己破産

法テラスで自己破産を依頼する流れと費用を弁護士がやさしく解説

弁護士 斎藤大貴

「自己破産をしたいけれど、弁護士費用を払えない……」と悩んでいませんか?
そんなときに利用できるのが、法テラス(日本司法支援センター)の制度です。

この記事では、法テラスを利用して自己破産を依頼する場合の流れ・費用・条件・注意点を、弁護士がわかりやすく解説します。
「費用はどのくらいかかるの?」「生活保護でも利用できるの?」といった疑問にもお答えします。

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法テラスとは

法テラスの正式な名称は、日本司法支援センターです。
総合法律支援法という法律に基づいて設立された公的な団体です。

経済的に余裕がない方でも法的サービスを受けられるように、弁護士費用を立て替えるサービス(民事法律扶助制度)などを提供しています。

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法テラスを利用して自己破産を依頼する流れ

法テラスを利用して自己破産を進めるおおまかな流れは次のとおりです。

弁護士に相談する

まず、弁護士に法律相談をします。
法テラスに連絡して契約弁護士を紹介してもらうか、自分で弁護士を探して相談を申し込みます。
当事務所も法テラスの契約弁護士として対応可能です。

法テラスに申し込む

弁護士と相談後、法テラスの利用を希望する場合は、弁護士を通じて法テラスに申し込みます。

申し込みには、住民票(世帯全員分、マイナンバー以外省略のないもの)、収入に関する書類(給料明細書、年金振込通知書、保護変更通知書など)が必要です。

審査と援助開始決定

審査の結果、利用が認められれば「援助開始決定」が行われます。
法テラスから弁護士に契約書などが送られます。

契約書への署名・押印

契約書などに署名・押印をしていただき、弁護士を通じて法テラスに提出します。
これで正式に、法テラスを通じた自己破産の依頼がスタートします。

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費用と支払い方法

弁護士費用

自己破産の場合、法テラスが定める基準(日本司法支援センター業務方法書別表3)により、費用はおおむね次のようになります。

債権者数着手金代理援助実費合計
1社~10社132,000円23,000円155,000円
11社~20社154,000円23,000円177,000円
21社以上187,000円23,000円210,000円

これらの金額は、法テラスが一時的に立て替え、利用者は毎月約5,000円ずつ分割返済します

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法テラスを利用する場合、弁護士費用の金額は法テラスが決定します

法テラスの場合、弁護士費用は大きく分けると次の三つです。

  1. 着手金
  2. 代理援助実費
  3. 報酬金

着手金と代理援助実費は、おおむね前記の表のとおりですが、事件の難易度により増額される場合があります。

報酬金は、通常、発生しませんが、自己破産の申し立ての準備の過程で弁護士が過払い金を回収した場合には、回収した過払い金の金額に応じて報酬金が別途発生する場合があります。

予納金

裁判所に納める以下の費用(予納金)は法テラスの立て替え対象外です。
依頼者に準備していただく必要があります

  • 同時廃止事件の場合:官報公告費11,859円
  • 管財事件の場合:官報公告費と管財人費用として約20万円以上

生活保護受給中の方

生活保護受給中返済が猶予され、自己破産の手続きが全て終了した時点で引き続き受給中の場合は免除申請が可能です。
免除申請が認められれば、法テラスへの返済義務はなくなります

また、生活保護受給中の場合、法テラスが官報公告費と20万円までの破産管財人費用を立て替えます。
破産管財人費用が20万円を超える場合には、20万円を超える金額の破産管財人費用は依頼者に準備していただく必要があります

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利用条件

法テラスの契約弁護士に依頼する

法テラスを利用するためには、法テラスと契約を締結している弁護士(契約弁護士に依頼する必要があります。

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法テラス札幌の契約弁護士は、法テラス札幌のウェブサイトの「契約弁護士名簿」というPDFファイルで確認することができます。
ただし、契約弁護士が全員掲載されているわけではなく、「契約弁護士名簿」に掲載されていなくても契約弁護士である場合があります。

法テラスの契約弁護士への相談や依頼を希望される場合は、法テラスに連絡して契約弁護士を紹介してもらうか、自分で契約弁護士を探して相談を申し込む必要があります。

収入・資産が一定の基準を下回っていること

法テラスを利用するためには、収入と資産が法テラスの定める基準を下回っていることが必要です(日本司法支援センター業務方法書9条1号)。

収入に関する基準

収入に関する基準は次のとおりです(日本司法支援センター業務方法書別表1)。

世帯人数基準金額
単身者182,000円以下
2人家族251,000円以下
3人家族272,000円以下
4人家族299,000円以下
5人家族以上次の金額以下
299,000円+30,000円×(5人目以降の人数)

上記の基準を基本に、事情に応じて細かい金額の調整がされた後、基準を満たすかどうかが判断されます。

資産に関する基準

資産に関する基準は次のとおりです(民事法律扶助業務運営細則8条1項)。

世帯人数基準金額
単身者180万円以下
2人家族250万円以下
3人家族270万円以下
4人家族以上300万円以下

勝訴の見込みがないとはいえないこと

法テラスを利用するためには、勝訴の見込みがないとはいえないことが必要です(日本司法支援センター業務方法書9条2号)。

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自己破産の場合には、免責を得ることができる見込みが必要です。

なお、私は、これまで、「勝訴の見込みがないとはいえないこと」という要件を満たさないという理由で法テラスを利用できなかったことはありません。
弁護士が勝訴の見込み(自己破産の場合には、免責を得る見込み)がないにもかかわらず事件の依頼を引き受けることはないので、弁護士が依頼を引き受ける場合には、通常、この要件を満たすと考えられます。

民事法律扶助の趣旨に適すること

法テラスを利用するためには、民事法律扶助の趣旨に適することが必要です(日本司法支援センター業務方法書9条3号)。

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自己破産を弁護士に依頼したいという場合、通常はこの要件を満たしていると考えられますが、債務総額が小さい場合(特に、債務総額が弁護士費用(法テラスが決定する立て替え金)の金額を下回るような場合)には「民事法律扶助の趣旨に適すること」という要件を満たさないと判断される可能性があります。

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注意点

法人は法テラスを利用できない

法人の場合には、法テラスを利用することができません
そのため、法人破産については、法テラスを利用してご依頼いただくことはできません(代表者個人の自己破産のみを法テラスを利用してご依頼いただくことは可能です)。

自己破産で法テラスを利用すると他の事件で法テラスを利用できない

自己破産で法テラスを利用中は、他の事件での新規利用が制限されることがあります

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自己破産を依頼するために法テラスを利用している場合、破産手続きの開始決定がされるまでは、原則として、法テラスを利用して新たに別の民事事件を依頼することができなくなります(民事法律扶助業務運営細則9条の5)。

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民事法律扶助業務運営細則9条の5

(自己破産申立事件等における特例による援助不開始決定基準)
第9条の5 地方事務所長は、自己破産申立事件若しくは民事再生申立事件(以下「自己破産申立事件等」という。)について援助の申込みをした者若しくは自己破産申立事件等の援助開始決定を受けた者が破産手続開始の決定若しくは民事再生手続開始の決定前に他の事件について援助の申込みをした場合又は他の事件について援助の申込みをした者がその援助開始決定前に自己破産申立事件等について援助の申込みをした場合においては、当該他の事件が理事長が別に定める事件に該当するときを除き、業務方法書第32条第2項に基づき、当該他の事件につき援助不開始決定をする。

法テラスから契約弁護士・司法書士に配布された文書(令和3年11月8日付け「【民事法律扶助】契約弁護士・司法書士の皆様へ」と題する文書)には、次のような場合には、援助を不開始とする(法テラスを利用することができない)可能性があると記載されています。

  • 自己破産申立事件の援助申込みと同時に他の一般事件の援助申込みをした場合
  • 自己破産申立事件の援助開始決定を得た被援助者が破産手続開始決定前に他の一般事件の援助申込みをした場合
  • 一般事件の援助申込みをし、当該事件の援助開始決定前に自己破産申立事件の援助申込みをした場合
令和3年11月8日付け「【民事法律扶助】契約弁護士・司法書士の皆様へ」と題する文書

ただし、以上の場合にあてはまる場合であっても、次の類型にあてはまる場合には、例外的に援助を開始する(法テラスを利用することができる)ことが可能であると記載されています。

  1. 保佐人又は補助人(以下「保佐人等」という。)を付さなければ自己破産申立て又は民事再生申立てをすることができない場合における保佐人等選任申立事件
  2. 直ちに援助を開始しなければ、申込者又はその監護下にある未成年子の生命又は身体に危険が及ぶおそれがあると認められる場合において、その危険を排除するために援助の必要がある事件
  3. 自己破産申立事件における破産手続開始決定又は民事再生申立事件における民事再生手続開始決定を待っていたのでは自己の権利の実現が不可能又は著しく困難となる場合において、その権利の実現のために援助の必要がある事件
  4. その他本部において前3号に掲げる事件に準ずるものとして援助開始決定をすることが相当であると認めた事件
令和3年11月8日付け「【民事法律扶助】契約弁護士・司法書士の皆様へ」と題する文書
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まとめ

法テラスを利用すれば、弁護士費用を立て替えてもらうことで、費用の負担を抑えながら自己破産の手続きを進められます。
「費用が心配で破産の相談をためらっていた」という方も、まずは弁護士にご相談ください。

当事務所は法テラスの契約弁護士として、自己破産のご相談を承っています。
初回相談時に「法テラスの利用を希望」とお伝えください。

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斎藤大貴
斎藤大貴
弁護士
札幌弁護士会所属の弁護士です。債務整理と債権回収を中心に、さまざまなご依頼をお受けしています。
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